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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)77号 判決 1950年6月16日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士野間彦蔵の上告理由について。

論旨はその第三項の(一)及び(二)の各(イ)において原判決が証拠として採用した甲第一五乃至第一七号証が如何なる証拠を指すものであるか本件訴訟記録上全く不明であると云うのである。よつて記録を調べてみると原審昭和二三年六月一六日口頭弁論調書によれば当事者双方は第一審判決事実摘示の通り第一審における証拠の提出、認否、援用をしたことが明らかである。そして第一審判決事実摘示中には被上告人が甲第一五乃至第一七号証を提出し、上告人がその成立を認めた旨の記載があるから原審において被上告人が右書証を提出したことは明白である。ところが一件記録中には右書証の写が見当らず、したがつてそれが如何なる書証であるか記録上不明であることは、論旨の指摘する通りである。しかしながら当事者が提出した書証の写を裁判所に提出し、裁判所がこれを記録に綴ぢ込んでおくことは、必ずしも訴訟法の要求するところではなく、単に実際の便宜上慣行されているに過ぎないのであるから、記録に写を添付しなかつたこと自体は何等違法とはいえない。また被上告人が右書証を提出したことは前記の通り明らかなのであるから原判決が証拠に基づかずして事実を確定した違法があるともいえない。そしてその他の論旨は原審がその職権に基づき適法にした証拠の取捨判断及び事実の認定を非難するに過ぎないものであるから上告適法の理由とならない。

よつて民訴第四〇一条、第九五条、第八九条により主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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